睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは?
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に何度も呼吸が止まったり(無呼吸)、止まりかける(低呼吸)状態を繰り返す病気のことです。
日本では推定300万人以上の睡眠時無呼吸症候群の患者さんがいると考えられており、約15%程度の患者さんのみが治療を受けているような状況です。
最近ではメディアを通し、病名を耳にすることも増えてきましたが、病態が十分に認識されておらず、症状があっても未診断の方が多いのもこの病気の特徴です。
睡眠時無呼吸症候群は閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)と中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS)の2種類に分けられます。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)
睡眠時無呼吸症候群患者の約9割を占めます。肥満や顎が小さいなどが原因となり、気道が狭くなったり、閉塞したりすることで無呼吸や低呼吸の状態になってしまう病気です。症状のひとつとして、大きないびきや、そのいびきが途中で数秒間止まったりすることがあります。
中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS)
呼吸中枢から呼吸の指令がでないことが原因で呼吸が止まってしまう病気です。閉塞性無呼吸症候群のような大きないびきをかかないこと、呼吸が止まった後の呼吸が徐々に大きく速くなり、その後小さくなる呼吸(チェーン・ストークス呼吸)などが特徴です。
主な症状とリスク因子
睡眠時無呼吸症候群が疑われる方には以下の症状や、リスク因子をお持ちの方が多いです。
主な症状
夜間
- 大きないびきやいびきが突然数秒間止まる
- 睡眠中に呼吸がとまる、息苦しい
- 夜中に何度も目が覚める、トイレに行く
- 寝つきが悪い
- 熟眠感/熟睡感がない
日中
- 強い眠気
- 倦怠感、頭痛
- 集中力、記憶力の低下
- ED、性的欲求の低下
など
主なリスク因子
- 肥満
- 中年以降
- 男性
- 閉経後の女性
- アルコールをよく飲む
- 喫煙者
- 睡眠薬や精神安定剤を服用している
- 家族(血縁者)に睡眠時無呼吸症候群の人がいる
- 鼻が詰まりやすい
- 舌が大きい、顎が小さい
など
合併症
循環器疾患をお持ちの患者さんは睡眠時無呼吸症候群を合併している割合が高いとされ、海外では心不全患者の70%以上が睡眠時無呼吸症候群を合併していると報告されています。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)を放置していると、高血圧、不整脈、狭心症(心臓の血管が狭くなる病気)や心筋梗塞(心臓の血管が詰まる病気)、心不全などの発症リスクを高めます。また肥満や糖尿病、高コレステロール血症などの生活習慣病があるとさらに発症の危険性が上がります。
そして中枢性睡眠時無呼吸症候群は上記のような循環器疾患を増悪させます。
Mokhlesi B,et.al.Eur Respir J.2016;47(4):1162-1169
Oldenburg O et al,Eur J Heart Fail.2007 Mar;9(3):251-7
睡眠時無呼吸症候群は循環器疾患による入院や再発のリスクが高まると同時に新たに発症する危険性も上がります。また交通事故を増加や、認知症のリスクも上昇します。
ご自身では気が付かないうちに発症しているケースも多いです。
睡眠時無呼吸の評価を行う、Epworth Sleepiness Scale:ESSという評価方法があります。こちらの評価で睡眠時無呼吸症候群が疑われる方や、リスク因子をお持ちの方、ご自身でまたはパートナーにいびき、無呼吸を指摘されたことがある方は一度受診をお勧めします。
検査方法
睡眠時無呼吸症候群の検査は簡易PSG検査機器を使って行います。睡眠時に検査をし、AHIという無呼吸・低呼吸指数を調べます。
睡眠外来を受診されたら問診票に記入、診察、基本検査を行っていただきます。
検査内容
- 採血
- 心電図
- 胸部レントゲン
- ABI(動脈硬化の度合いを調べる検査)
- 心臓エコー(心臓に超音波をあてて心臓の動きを調べる検査)
- 頚動脈エコー(首に超音波をあてて血管の太さを調べる検査)
追加検査として
- ホルター心電図検査(24時間心電図を記録する機械をつけ、様々な条件でどのように心臓が動いているかを調べる検査)
- 冠動脈CT検査(心臓には栄養を運ぶ大事な血管が3本あり、その血管に狭くなっているところがないか、詰まっているところがないか調べる検査)
があります。診察の際に医師が必要と判断したら追加で検査していただきます。
検査が一通り終了したら簡易PSG検査機器について説明があります。
ご自宅で行っていただく検査となりますので検査機器の装着方法、検査スタートの仕方について説明があります。5~10分程度で終了します。
検査機器の返却は翌日持ってきていただくか郵送していただきます。
簡易PSG検査機器返却方法について
検査機器返却は翌日病院に機械をもってきていただきます。
翌日持ってきていただくことがどうしても難しい場合は郵送をお願いしています。
① 翌日病院にもってきていただく場合
※平日、土曜午前8時半~午後5時までの場合
正面玄関が開いているのでそのまま入ってきていただき、受付に検査機器と説明書をお渡しください。
※平日、土曜上記以外の時間帯、日曜、祝日の場合
正面玄関は閉まっているので正面向かって左側に通路があります。その通路を奥まで進むと右手に扉がでてきます。扉前についたら病院にお電話ください。(TEL:03-3638-2301)もしくは扉向かって右側にインターホンがありますので鳴らしていただき、機器の返却にきたとお伝えください。中から職員が出てきますので検査機器と説明書をお渡しください。
② 郵送の場合
郵送の場合、予約時もしくは初診時に翌日の検査機器返却が難しいことをお伝えください。
初診時の検査機器操作説明時に郵送用の箱と着払い伝票をお渡しします。
検査終了後、翌日検査機器を取り外し、ケースにしまい、お渡しした郵送用の箱にそのまま入れてセブンイレブンかクロネコヤマト集荷可能場所にて発送してください。
郵送代として別途1000円(税込み)いただきます。
検査結果
AHIが20以下の場合
AHIが20以下であれば検査は終了となります。
AHIが20以上の場合
AHIが20以上40未満であれば睡眠時無呼吸症候群の疑いがあります。より詳しく検査を行うため一泊入院していただき、精密PSG検査をおこないます。
一泊入院は丸一日入院していただくものではなく、短時間の滞在で済むものです。
仕事終わりに病院に来ていただき入院し、翌朝仕事前に退院ということも可能です。
AHIが40以上であった場合睡眠時無呼吸症候群です。治療が必要となります。
検査の流れ
治療方法
当院でおこなっている治療法
CPAP療法(持続陽圧呼吸療法)
睡眠時に鼻全体を覆うマスクをつけCPAP装置から常に一定の圧を加えた空気を送り続けます。圧をかけた空気が鼻を通して気道を通ることにより狭くなったり、閉塞した気道を押し広げふさがらないような状態を保つことで無呼吸・低呼吸を防ぐことができます。
CPAP治療に慣れてきた方にはオンライン診療をご紹介しています。
生活習慣の改善
生活習慣の改善のみで睡眠時無呼吸症候群を治療することはできませんが、減量、減酒、減煙などをしていくことでより高い治療効果が期待できます。
当院では管理栄養士による栄養指導を受けることができます。栄養指導とは普段の食事に関する疑問や負担、不安が軽減するように管理栄養士が一緒に考えアドバイスすることです。ご希望の方は診察時にお伝えください。
その他治療法
マウスピースによる治療
睡眠中に舌や下あごを前方に固定するマウスピースを装着することで気道をふさがないようにする治療法です。
顎の位置を変えるだけで改善が見込めるような方、何らかの理由でCPAP療法を行えない方が対象となります。
外科的治療
気道閉塞の原因がアデノイド肥大や扁桃肥大などの場合、慢性副鼻腔炎や鼻中隔湾曲症など鼻閉を自覚している方、その疾患によりCPAP療法、マウスピース療法が難しい場合に選択が可能です。しかし根本的な睡眠時無呼吸症候群の治療法ではないため、あくまで補助的な治療です。
受診について
外来日
お電話でお問合せください
予約方法
電話予約のみ
※完全予約制
他院で簡易PSG検査を行い、精密PSG検査のみを受けたい方もお電話にて予約をお願いします。
診察の際には必ず簡易PSG検査結果を持参してください。
簡易PSG検査をすでに受けていると確認できない場合、再度当院で簡易PSG検査を受けていただく必要があります。
持参していただくもの
- 診察券(当院のをお持ちの場合)
- 保険証/医療証
会計方法
現金、もしくはクレジットカード、銀行振込
オンライン診療について
CPAPを導入し、ある程度慣れてきて問題なく使用できている方にはオンライン診療を推奨しています。病院へ来ることなく自宅や完全個別スペースが確保できている場所で医師の診察を受けることが可能となります。そのため仕事や家庭の都合で病院に来ることが困難な方にお勧めです。
CPAP治療は3ヶ月に1度の対面診療が必要となるため3回に1回は病院に来ていただく必要がありますが、3回中2回はオンライン診療が可能です。
導入例)